なぜ服の流行はコロコロ変わる?
この記事、こんな疑問に答えます
・買ったばかりのオシャレ服が、来年には「ダサいもの」に成り下がるのは不満…
・コロコロ変わるトレンド。なぜ、人はこんなに移り気なの??
・売る側も、毎年ブームを仕掛けてくるのはやめてくれ~
答えは「限界効用逓減の法則」と「収穫逓減の法則」にありました!
かんたんに言うと、
限界効用逓減の法則とは「人は飽きっぽい」ということ。
そして、
収穫逓減の法則とは「企業は新しいものを作り続けないと儲けが出なくなる」ということです。
順を追って説明していきます…!
流行の服を着こなす人がオシャレなのか?
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「変わらない」が最強のオシャレ説
「オシャレである」とはどういうことでしょうか。
むかし、何かの記事でこんな話を読んで「なるほど」と思ったことがあります。
・自分に似合うものがわかっていて、それを着続ける人こそがオシャレである
・つまり、「変わらないこと」が本当のオシャレである
いつも黒タートルのジョブズが真のオシャレ王?
言い換えると、服装がトレードマークになっている人こそが、真のオシャレさんである、ということです。
アップルの創業者、スティーブ・ジョブズさんを思い浮かべるとわかりやすいです。
いつも判で押したように、黒のタートルネックセーターとジーンズ。
本人は「服を選ぶ時間などムダだから」という理由で、黒タートルとジーンズを何着もそろえていたと言われます。
でもそれが、彼をキング・オブ・オシャレたらしめていたのだとしたら面白いです。
でもみんな流行に乗ってオシャレしたい
スティーブ・ジョブズみたいな人は少数派でしょう。
大抵の人にとって、「オシャレである」とは、流行の服を着こなすことです。
そうじゃなかったら、
ほとんどのアパレルメーカーは成り立たちませんし、ファッション誌も売れません。
流行にあやかりたい量産型オシャレさんは毎シーズン、いまのトレンドは何か?とアンテナを張り、乗り遅れまいとして新しい服を買います。
今年の最先端は、来年の最もダサいもの
このサイクルを繰り返すのはしんどかろう、と思います。
だって、いま買ったばかりの最新オシャレアイテムは、早ければ来年のいまごろ、遅くても数年後には「もっともダサいもの」に成り下がってしまうから。
新しいものを延々追い続ける量産型オシャレさんは、売り手が仕掛けた流行に踊らされ、「消費させられている」だけなのでしょうか…?
でもその背景には、飽きっぽい人間の性質と、新商品を生み出し続けなければ生命を維持できない企業の宿命があります。
そのからくりを学んだ参考書が、こちらです。
今回の参考書はこちら!
坪井賢一さんは「腕利き編集者」の経歴を持つだけあって、
小難しい経済をかみ砕いて伝えるのがとても上手です。
「めちゃくちゃわかるよ!経済学」おすすめポイント
書き始めると止まらないので、4つだけ。
- GDPの算出方法、短観(全国企業短期経済観測調査)が示す数字の意味など「経済を読む」ための基礎知識がわかる!
- 経済理論が生活にどう紐づいているかがよくわかる!
(この記事で、「限界効用逓減の法則」と「収穫逓減の法則」の解説を紹介します) - リーマンショックはなぜ起きた?からくりをていねいに解説
(今まで読んだ解説の中で、いちばんわかりやすかったです) - アダム・スミスからドラッカーまで、経済思想史がざっくりわかる!
(このパート、めちゃくちゃ面白いです)
著者の坪井賢一さんは「週刊ダイヤモンド」元編集長
- 1954年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業
- ダイヤモンド社で「週刊ダイヤモンド」編集長を務める
- コラムニストとしても活躍
限界効用逓減の法則とは?
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リピートするとだんだん満足感が減る
「めちゃくちゃわかるよ!経済学」で学んだ「オシャレの流行が毎年コロコロ変わる理由」をご紹介します。
背景にある経済のからくり、それが「限界効用逓減の法則」と呼ばれるものです。
「限界効用逓減の法則」とは?|ジェヴォンズ、ワルラス、メンガーの発見
1870年代、3人の経済学者がほぼ同着で、ある発見をします。
その3人とは、
- ウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズ(イギリス)
- レオン・ワルラス(フランス)
- カール・メンガー(オーストリア)
彼らは「同じ消費を繰り返すと、初回より2回目、2回目より3回目の満足感は落ちる」という現象を理論化しました。
経済学用語で「限界効用逓減の法則」と呼ばれるものがそれです。
「効用」とは「消費で得られる満足」
「効用」とは、消費で得られる満足のこと。
また彼らの発見は「限界革命」と呼ばれることもあります。
この理論のどこが、そんなに画期的だったのでしょうかか?
モノの価値は「労働」ではなく「買い手の満足」で決まる!
坪井賢一さんは「めちゃくちゃわかるよ!経済学」の中でこう説明しています。
「モノやサービスの価値は効用で決まる」というのが彼らの主張だ。それまでは「人間の労働が価値(価格)を決める」という労働価値説が主流だったんだ。
坪井賢一+ダイヤモンド社「改訂4版 めちゃくちゃわかるよ!経済学」(ダイヤモンド社、2012年)
経済学の父と言われるアダム・スミス以降、
モノの価値の源泉は「労働である」という理論が主流でした。
この系譜を継ぐカール・マルクスも「労働価値説」に基づいて、労働者は資本家に搾取されていると論じています。
吉野家の牛丼を3杯食べる男、Y君のはなし
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食欲爆発で10kg太る
「リピートするたびに満足感が落ちる」と聞くと、友人のY君を思い出します。
Y君の仕事は激務でした。彼は20代のころ連日、深夜まで仕事をしていました。
ストレスで食欲が爆発し、あっという間に10キロ太りました。
そのころの食生活を聞いたことがあります。
午前1時に吉野家へ
Y君は午前1時、仕事を終えると吉野家に直行します。
並盛の牛丼をかき込みます。Y君、まだ全然満たされません。
「すみません、おかわりください」
2杯目の牛丼も、お茶漬けでもすするように平らげます。
まだ、落ち着きません。
「あの、おかわりください」
牛丼並盛3杯目に、店員さんドン引き「あの人、まだ食べるって言ってます」
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3杯目の牛丼を注文すると、店員さんが気味悪がって後ずさりしました。
傍らにいた店長に「あの人、まだ食べるって言ってるんですけど…」と困惑気味に耳打ちしたそうです。
Y君はその様子を見て「俺、おかしいのかな?」と気づいたといいます。
牛丼は最後まで美味しかったでしょうか?
多分、いちばん美味しかったのは1杯目で、2杯目はまあまあ。
3杯目はちょっと食傷気味だったじゃないかと思います。
そのあと何日かは、牛丼を食べたいという気持ちも起きなかったでしょう…。
これは、
「同じ消費を繰り返すと満足感が落ちる」
の極端な例です。
Y君、これ買っておけばよかったのに。
収穫逓減の法則|ヒット商品増産は「売上アップ、利益率ダウン」を招く
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もうひとつの発見「ヒット商品はいつか、儲からなくなる」
ジェヴォンズ、ワルラス&メンガーの3氏の発見をもうひとつご紹介します。
それは、
「ヒット商品はいつか儲からなくなる」
ということです。
同一商品の生産を拡大すると、コスパが落ちる
なぜなら、同じ商品の生産を拡大すると、コスパが落ちていくからです。
どういうことでしょうか…?
たとえば、
従業員5人の小さな会社が「ご飯が美味しく炊ける炊飯器」を生産しているとしましょう。
この炊飯器がヒットして注文が相次ぎます。
従業員5人の会社|新たに5人雇えば、生産能力は100%増!(つまり2倍)
そこで、
従業員を新たに5人雇って合計10人体制にすれば、生産量は2倍になります。
10人雇って15人体制で生産ラインを回せば、生産量は当初の3倍です。
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その調子でどんどん人を増やしていくとどうなるでしょうか。
従業員1000人の会社|新たに5人雇えば、生産量は0.5%増…あれ?
従業員が1000人まで膨らんだとします。そして炊飯器はまだ売れ続けています。
この時点で5人を雇い入れた場合、生産量の上り幅は1000分の5、つまり0.5%でしかないのです。
従業員5人の町工場だったときは、
新たに5人を雇い入れる効果は
「生産量100%増(つまり2倍!)」でした。
それが今や、炊飯器メーカーとして確かな足場を築いた従業員1000人の会社にとっては、
5人を雇い入れる効果は
「生産量0.5%増」でしかないのです。
収穫逓減の法則|人を増やす効果は、生産規模が大きくなるほど小さくなる
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どちらのケースも、発生するコストは「5人分の人件費」で同じ。でもその費用対効果は、生産規模が大きくなればなるほど小さくなるのです。
需要が変わらなれば、売り上げは伸びる。でも、追加費用に対する効果はどんどん落ちる。
つまり一般的な製造業では、どんな商品もだんだん儲からなくなります。
しまいには、採算が取れなくなってしまうのです。
この現象を「収穫逓減の法則」といいます。「限界生産力逓減の法則」とも。
儲けたければ、どうする?
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新商品を出すべし!
このジレンマから脱却するにはどうすればいいのでしょうか?
それは、新商品を出すこと。新モデルを出すことです。
どんな「定番商品」であっても、カラーバリエーションを増やし、「なんちゃら限定コラボ」をひねり出さねばならないのです。
そうやって新しいモノを次々に生み出すことで、企業は収益を保ち、成長を続けようとします。
毎シーズン、アパレルメーカーが「次の流行はコレ!」と仕掛けてくるのもこのためです。
経済社会に生きる者の宿命か
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経済活動の基本はショッピング!
経済コラムニスト・大江英樹さんの「知らないと損する経済とおかねの超基本1年生」(オススメ!)の中に、こんな言葉が出てきます。
「経済活動の基本はショッピング」
大江英樹さん「知らないと損する経済とおかねの超基本1年生」(東洋経済新報社、2005年)
なぜ、「経済活動の基本はショッピング」なのでしょうか?
それは、「消費者がモノやサービスを買う」という行為がなければ経済は回らないからです。
消費者が商品を買うことで、その売上が製造元の従業員、取引先、製造元に融資している銀行、製造元のオーナーである株主へと流れていきます。
それでも余った分は、製造元が次の投資に回しますす。
そして次の商品が生み出されるのです。
消費者は、常に新しい刺激を欲する
そして、「限界効用逓減の法則」が明らかにしたように、
同じモノに満足できない消費者は、常に新しい刺激を欲しています。
今までと違うもの、新しいものを買わずにはいられないのです。
メーカーは、新商品投入とモデルチェンジが至上命題
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片やメーカーは、新商品の投入とモデルチェンジを宿命づけられています。
「収穫逓減の法則」にあるように、
同じものを作り続けていると、売上が伸びても利益がどんどん小さくなってしまうからです。
だから、毎シーズン服を買い替える量産型オシャレさんは、
経済社会が機能し、メーカーが新商品を出し続ける限り、姿を消すことはありません。
量産型オシャレさんは「踊りたい人たち」
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消費者は飽きっぽく、常に新しいものを欲しがります。
メーカーは利益を確保するために、新しいものを出し続けます。
流行に踊らされているのではないのです
お互いの利害が一致しているから、モノが売れます。
つまり、
常に「みんなと同じ格好をしている」ように見える量産型オシャレさんは、
流行に踊らされているのではないのです。
踊りたいから踊っているのです。
量産型オシャレさんこそ、経済社会の担い手
彼らを小ばかにすることなどできません。
彼らこそ、経済社会の重要な担い手なのです。
でも僕は、着たきりすずめのスティーブ・ジョブズさんにシンパシーを感じるなあ。
自分の好きなもの、しっくりくるものを長く着ればいいと思うのです。
きっとジョブズさんには、1着目の黒タートルネックも、10着目の黒タートルネックも、おなじ満足感だったのでしょう。
あらためて、本日の参考書
まとめ読みはkindleアンリミテッドがおすすめ!
「めちゃくちゃわかるよ!経済学」
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