「めっきらもっきらどおんどん」感想 最高に楽しい「遊び放題の異世界」への旅

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長谷川摂子さん&ふりやななさんの「めっきらもっきらどおんどん」は1990年に刊行された絵本です。
「幼い子どもが異世界に迷い込み、不思議な体験をして戻ってくる」というストーリーは古今東西数多いですが、この作品は「異世界冒険モノ」の中で最高峰ではないかと。大好きなポイントをご紹介していきます。

もくじ

「めっきらもっきらどおんどん」のあらすじを簡単に

主人公「かんた」は、6歳くらいの男の子

「めっきらもっきらどおんどん」の主人公は、かんたという男の子。絵の雰囲気からすると、6歳くらい
かな?という印象です。

夏のある日、かんたは1人で外をぶらぶらしているうちに異世界に迷い込みます。

「めっきらもっきらどおんどん」は、かんたの即興ソングのフレーズ

異世界にワープするきっかけになったのが、かんたが神社の前で歌った即興の「めちゃくちゃな歌」。

「めっきらもっきらどおんどん」は、かんたの即興ソングの最後のフレーズです。
この歌が妖怪たちの耳に届き、神木の根元に異世界に通じる穴が開きます。

陽気な3人の妖怪に歓待される

迷い込んだ世界で出会ったのは、3人の妖怪。作中では「おばけ」と書かれていますが、3人とも、妖怪と呼んだ方がしっくりくる感じのキャラクターです。
妖怪たちは、かんたを見つけて「ともだちが来た!」と大興奮し、思いっきりもてなします。

以下、「めっきらもっきらどおんどん」の魅力がわかるシーンをご紹介

あらすじを簡単に書くと、味もそっけもないのですが…こんな感じです。
以下、好きなシーンをご紹介していきます。

「あそぶともだちが、だれもいない。みんなどこへいったのかな?」

それは、夏の盛りのある日のお話

「めっきらもっきらどおんどん」は、最初のページがもう最高です。
広がる緑の木々と、点在する家並み。空は真っ青に晴れ渡り、入道雲がもくもくと湧いています。
季節は夏の盛り
小さく描かれたかんたは、ランニングに半ズボンの後ろ姿です。

そこに、この書き出し。

あそぶともだちが、だれもいない。みんなどこへいったのかな?

この時のかんたの気持ち、僕は手に取るようにわかります。

思い出すのは、暇を持て余した夏休みの孤独感


小学生のころ、夏休みはほぼ毎日ヒマでした。
家族旅行に行ってもせいぜい2泊3日。田舎のおばあちゃんちに泊まるのも、お盆前後の5日間くらい。あとは毎日、家で過ごすだけ。

もちろん宿題など、2学期へのカウントダウンが始まるまで一切手を付けません。
やることと言えば、小学校のプールに行くか、テレビで甲子園を観るか、近所の子と遊ぶか。
同年代の子は同じマンションに何人もいて、外に出ればたいてい、誰かが中庭で遊んでいました。

友だちが誰も見当たらない日、本当にありました


でも、たまにあるんです。誰もいない日が。
そんな時、僕も思っていました。みんな、どこ行っちゃったんだろう?と。

長すぎて退屈な夏休み。
外に出かければ近所の子に会えると思っていたのに、誰もいなかったときのちょっとした失望。孤独感

かんたの「あそぶともだちが、だれもいない。みんなどこへいったのかな?」というつぶやき。
子どもの頃の記憶をくすぐってくるこの冒頭のシーンだけで、僕はもう「めっきらもっきらどおんどん」が大好きなのです。

「さあ、あそぼうぼう」

空から降って来たかんたに飛びつく3人の妖怪たち

神木の根元の穴に吸い込まれるようにして、異世界に落ちたかんたのもとに、3人の妖怪が「空飛ぶ丸太」に乗って押しかけます。3人とも、なんともヘンテコな名前です。

ちなみに音の響きの面白さは、子どもの脳にとってとてもいい刺激なんだそうです(黒川伊保子さんの「母脳」で読みました)。

もんもんびゃっこ|白い狐のお面の顔をした大男

真っ白な狐のお面のような顔に、異様に長い手足。尻切れ半纏姿。

しっかかもっかか|髪も顔も真っ赤な女の子

かんたと同じくらいの背丈の女の子。髪も顔も真っ赤。くるくるの長い髪の毛は体の3倍くらいのボリューム。猫娘のような、憎まれ口をたたかないちびのミイのような…

おたからまんちん|頭の大きな白髭のおじいちゃん

異様に頭が大きい、2頭身くらいのおじいちゃん。白いくて長いひげを蓄え大黒様のような姿。

かんたに迫る陽気な妖怪たち


3人の妖怪は「ともだち」を見つけたのがうれしくて、めいめいに自己紹介します。
そして、かんたに「さあ、あそぼうぼう」(おたからまんちん)と迫ります。

「やめろっ、じゃんけんだ!」

怖いけど、強がって突っ張るかんた

かんたは、異世界に放り込まれて訳も分からないうちに妖怪たちにからまれ、とっても怖かったはずです。でも、弱気を見せるのがいやだったのでしょう。
精いっぱい強がるポーズを見せて
「いやだっ!ばけものなんかとあそぶかいっ!」
と3人を拒絶します。

自分を取り合う妖怪に「上から目線」でちょっと威張る

すると、大声をあげて泣き出す妖怪たち。その泣きっぷりに圧倒され、かんたは耳をふさぎながら
「うるさいっ!あそんでやるから、だまれっ!」
と叫びます。

こんどは、遊ぶ順番を巡ってケンカを始める妖怪たち。
そこで出たかんたのセリフが、見出しで紹介した「やめろっ、じゃんけんだ!」です。

子どもの観察眼の鋭さがわかるシーン

3人の妖怪たちは怖いけど、どうやら自分のことが大好きで、遊びたくてしょうがないらしい。
そんな様子を見たかんたは、思いっきり上から目線で妖怪たちに威張るのです。
妖怪たちの精神年齢が低いことを察して「こいつらは自分より幼い」と判断したのかもしれません。

いずれにせよ、子どもながらの鋭い観察眼がかんたの態度にあらわれていて、読むたびに感心してしまいます。

現実では孤独→異世界で人気者のギャップ

現実世界では、あそぶ友だちがなぜか見つからなくて、ふてくされていたかんた。
それが異世界に迷い込んだとたん、「遊んでくれ!!」と駆け寄ってくる妖怪が3人もあらわれたのです。

孤独な「寂しい少年」が、世界をまたいだとたん、「人気者」に。この目が回るようなギャップの鮮やかさも、「めっきらもっきらどおんどん」の魅力です。

「なに、ビールおうさまのかんむりか」

おたからまんちんとの「お宝交換」

おたからまんちんは、かんたの目の前で色とりどり宝の玉をぶちまけ、
「さあいらっしゃい。おたからこうかんだ。どれでもすきなのととりかえてしんぜる」
と持ち掛けます。

かんたは「ビールのおうかんでもいいかい?」と、ポケットに入れていた王冠を差し出します。
かんたはおたからまんちんの膝の上に乗って、リラックスした様子。
口調も柔らかくなっています。

「こんなおたからがてにはいるとは、ありがたきしあわせ」

王冠を受け取ったおたからまんちんのセリフが最高です。

「なに、ビールおうさまのかんむりか。こんなおたからがてにはいるとは、ありがたきしあわせ」

これ、かんた笑わせようとして言ったのではありません。
その証拠に、おたからまんちんはこのあと、王冠を大切そうに指先でつまんだまま、眠ってしまうのです。妖怪たちの世界には、瓶ビールも、王冠もないのでしょう。
おたからまんちんは心から、かんたがくれた宝物を喜び、代わりに、とても美しい水晶玉をかんたにプレゼントします。

子どもの夢「飽きるまでひたすら遊ぶ」を叶える

もんもんびゃっこ、しっかかもっかか、おたからまんちんが住む世界は、おどろおどろしい風景が広がっていますが、じつは、子どもがやりたい放題の夢の世界。「めっきらもっきらどおんどん」は、かんたが「飽きるまでひたすら遊ぶ」という夢のような時間を体験するお話です。

夜中じゅう、遊んでいても怒られない

かんたが迷い込んだ異世界は、「夜の山」でした。
夜は、子どもが外に出られない時間。でもかんたは、夜の闇の中で妖怪たちと思う存分遊びまわります。

歯磨きしなくていい、風呂も入らなくていい

さんざん遊んだあと、かんたと3人の妖怪は、「おもちのなる木」をみつけて紅白のおもちを好きなだけ食べます。お腹がいっぱいになると、そのまま雑魚寝。
歯も磨かないし、お風呂にも入りません。子どもにとってめんどくさいことは、何もしなくてよし!

うるさいお母さんもいない「子どもだけのとくべつな場所」

夜中に外で遊んでもOK、歯磨きしなくてよし、風呂も入らなくてよし。
やりたい放題できるのは、口うるさいお母さんがいないから。
この夢の世界は「子どもだけのとくべつな場所」です。
その代わり…

遊びを邪魔する存在「母」を思い出すとゲームオーバー

里心がついて、母親が恋しくなると、この異世界ではゲームオーバーなのです。

「お母さん出入り禁止」だから「好きなだけ遊んでOK」

もんもんびゃっこも、しっかかもっかかも、おたからまんちんも、おもちで膨らんだお腹を抱えてぐうぐう寝ています。
1人で月をみているうちに急に心細くなったかんたは、「おかあさーん」と叫びます。

その瞬間、空に銀色の光が満ちて、かんたは上空に口を開けた穴に吸い込まれていきます。

気が付くと、ご神木の根方でぼんやり立っているかんた。
そのとき、「かんちゃーん、ごはんよー」と、お母さんが呼ぶ声が聞こえ、かんたは家へと駆けだします。

かんたが忘れた歌を、僕らは覚えている

かんたはその後も、何度もあの神社に行きます。
でも、異世界への入り口は、もうかんたの前に現れてはくれませんでした。

入り口を開くための呪文?だった、めちゃくちゃな即興ソングも、もう思い出せません。

もしかして、夢の世界へのカギを託された?

でも、この作品を読んだ子どもたちは、覚えているのです。

かんたが歌った、あのめちゃくちゃな歌を。

不思議な歌「めっきらもっきらどおんどん」を覚えている限り、いつか私にも、不思議な世界が扉を開いて招き入れてくれるかもしれない——この本を読み終わったときには、そんなワクワク感に包まれます。

子どもだけの夢の世界がどこかにある、そして、私は、その世界につながるカギを持っている。
そんな風に感じさせてくれる「めっきらもっきらどおんどん」は、子どもの想像力を搔き立ててくれる素敵な作品です。

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