人生は決断の連続
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子どもや若者がまぶしくみえるのは、ひとつには無限の可能性を宿しているからですね。
でも、人生は決断の連続です。
決断とは、断つことを決すること
ファイナンスの専門家・石野雄一さんが「実況!ビジネス力養成講義 ファイナンス」(日経BP、2021年)の中で、トヨタ自動車の総帥・豊田章男さんの言葉を紹介しています。
「決断」という字は、断つことを決することなんだ。
石野雄一「実況!ビジネス力養成講座 ファイナンス」(日経BP、2021年)
決断とは、何かを選択することです。そして選択とは、選んだもの以外のすべての可能性を断ち切ることです。
だから、「何も選んでいないが可能性に満ちた若者」よりも、「他の可能性をすべて捨てて道を選んだ大人」の方が尊い、と思います。
可能性に満ちている状態はそれだけでワクワクします。でも、何も選ばないまま、可能性の柔らかな幻想の中に生き続けることはできません。
なぜなら、時が流れて老いていくほどに、自分が何かになれる可能性は消えていくからです。
この記事では「自分の決断の重みを計ったことありますか?それ、見た目よりずっと重いですよ」という話を書いてみたいと思います。
大学4年間のコストは、入学金+4年分の授業料だけじゃない
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経済学に「機会費用」という言葉があります。
英語では、opportunity cost というそうです。
もしほかのことをしていたら、どのくらいの利益があった?
経済コラムニスト・大江英樹さんの「知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生」(東洋経済新報社、2015年)では、このように定義されています。
あることをおこなう場合に、もしそれをせずに他のことをしていれば、代わりに一体どれくらいの利益が得られたであろうかということ
大江英樹「知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生」(東洋経済新報社、2015年)
何かをすれば、一方で何かを失っている
石野雄一さんの「実況!ビジネス力養成講座 ファイナンス」ではこうです。
何かをすれば、その一方で何かを失っている。これを機会費用といいます。
石野雄一「実況!ビジネス力養成講座 ファイナンス」(日経BP、2021年)
具体的に説明した方がわかりやすいですね。
大学に4年間通うことを例に考えてみましょう。
大学の学費が500万円|4年間のコストはこれだけ?
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僕が通っていた大学は、入学金が80万円、授業料が年間100万円ほどでした。このほかに教科書代なんかも含めると、4年間の学費はおおよそ500万円になります。
僕は奨学金で大学に通うような殊勝な学生ではなかったから、学費はすべて親に賄ってもらいました。ずいぶん負担をかけたものです…。
「もしもボックス」で別の人生を考える
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でも、大学に4年間通うコストはこれだけではありません。
ドラえもんのひみつ道具「もしもボックス」で別の世界を体験するように、もう一つの人生を仮定しなければならないのです。
もし就職していたら、どれだけの収入があったか??
具体的には、「大学に行かず就職していたら、どれだけの収入があったか」を考えるのです。
これが、機会費用に当たります。
18歳の僕が、就職先で月20万円の給料を得ていたとしましょう。
さらに、ボーナスが夏冬合わせて月給2か月分出たとします。
そうすると年収は280万円です。
同じ会社で4年間働き、給料が変わらないと仮定すれば、18歳から22歳までの間に1120万円の収入があったことになります。
機会費用は、就職で得ていた収入1120万円+学費500万円!
つまり、実際の僕は大学で4年間、1120万円の収入を捨てて遊び呆けていたことになるのです。
実際の学費500万円と、もし就職していたら得られていた収入1120万円を足すと、なんと1620万円。1年あたり、405万円。大学生活にそれだけの経済的価値があったなんで、まるで考えたこともありませんでした…。
もしあの頃、大学生活の機会費用を知っていたら…
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機会費用の考え方は、もっと些細なことにも適用できます。
ダラダラ過ごす半日は、バイトしていたら6000円の価値
学生生活を例にとると、友達の家でダラダラ過ごす半日は、バイトのシフトを入れていれば6000円の価値があったはず、とか。
僕は典型的な文系のダメ学生でした。
夜勤のバイト明けで眠いからと言っては授業を休み、たまに学校に行ったかと思えば、友達に誘われるまま教室の手前でUターンし、雀荘に直行。
(あまりに弱かったので、麻雀はすぐに引退しました)
大学生活には、学費の倍以上の価値がある!
医学や薬学を選んだ人や、法学部に入って司法試験を目指す人でもない限り、自分の専攻分野に直結した仕事に就く人は少ないです。
専攻と職業がリンクしない大多数の学生にとって、大学に通う価値は「実社会ですぐに役立つわけではないこと」「浮世離れしたこと」「日常生活の中では考えもしないようなこと」を集中して学べることにあると思います。それによって、ものの見方が深くなります。
これはずいぶん後になって気づいたことです…。
しかも、そのかけがえのない大学生活には、実は学費の倍以上の価値があるのです。
この4年間は1620万円相当です、と知っていれば、ちゃんと授業に出て、もっと本を読み、日々に感謝しながら学制生活を送ることができたかもしれない、と思うのです。
仕事にも生きる「もしもボックス思考」
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石野雄一さんの「実況!ビジネス力養成講義 ファイナンス」には、新たな事業投資から得られる収益を見積もるときも、この「機会費用」を計算に入れるべし、ということが書いてあります。
貸し駐車場をつぶしてショッピングモールを立てる例
ある会社が、大きな貸し駐車場をつぶしてショッピングモールを建てる、という例が出てきます。
この時、投資額(=ショッピングモールの建設費)に対して将来どれほどのリターンがあるかを計算するだけでは、意思決定を誤りかねない、と石野さんは指摘しています。
なぜなら、貸し駐車場をつぶすことで失う儲けをマイナスしていないから。
「もしも、貸し駐車場をそのまま運営していたら」という「もう一つの未来」の検証を忘れているのです。
この「駐車場をつぶすことで失う儲け」が機会費用に当たります。
行けばわかるさ、迷わず行けよ!でも、その前に想像してごらん、別の道を
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何かを選ぶことは、何かを失うこと。
失うものの大きさを十分に考えて道を決めなければならないのです。
失うものの価値を定量化して考えるところ、損得を徹底して考えるところが、経済学の発想なのですね。こういうの、学生のころの青臭い自分は好きになれなかったと思うけど、いま学ぶととても面白いです。
あらためて、本日の参考書
・大江英樹さん「知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生」
・石野雄一さん「実況!ビジネス力養成講座 ファイナンス」
学生時代を無駄に過ごして後悔…でも、学びはいつでもできる!
機会費用の考え方を知っていれば、学生時代をあんなに無為に過ごすこともなかった…と後悔しているあなた。はい、私も同じです。
公務員試験や司法試験の勉強をしている人でもない限り、文系の大学生などは概ねそんなものでしょう。
でも、学ぶことはいつだってできます。
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